SCENE272 【睡眠とストレス】 意外な被災地映像の影響
◆津波映像で不眠になった患者さんたちへ
(精神科医のメルマガ引用)
町が津波に呑まれる映像を見続けて、眠れなくなった患者さんが立て続けに出現した。
そういった患者さんのほとんどは愛知県在住の方々である。
そういった患者さんは、「起こっている現実から目を背けてはならない」と、律儀に津波映像を見続けていた。
デリケートなこころをもった人々は、映像を介してでも、心的外傷を体験してしまう。
これをPTSDと呼び習わすのは、明らかに過剰診断であろう。
PTSDにおける心的外傷とは、
その人の生き死にに関わるような体験に由来するものに限定されている。
私はそのような患者さんに、津波被害の映像を見続けるのは止めた方がよい、とアドバイスした。
患者さん達は、津波映像を使命感にかられ見ていたばかりでなく、
”明日自らに降りかかるかもしれぬ災厄”に備え、TVから離れられないでいたのである。
私は「本当に大切な情報は、TVを見ていなくとも、
必ずあなたにもたらされるはずであるから、勇気をもってTVを切りましょう」と伝えた。
近頃、子供のPTSDについて、その対応の重要性・特殊性について、知らされ始めているが、
精神科患者さんたちは同じようなレベルでナイーブなのである。
子供たちは自ら受けた衝撃を語る言葉を持たず、
そのPTSDは遷延化したかたちでもたらされることが多い。
このような大きな災厄の中にあっては、
「がんばろう」「立ち直ろう」と鼓舞するポジションに位置する人と、内向的・自責的に打ち沈んでいく人と、2層にくっきり別れていくように思う。
そして、どちらも傷つき苦しんでいる。
この大規模被害の現状にあって、傷ついているがかろうじて立てる”強い人”が、うちのめされ身を固めている”弱い人”を助ける構図になっている。
この重層的な被害の構図は、直接の被災地のみならず、
遠く愛知の地においても見られている、そういう気がする。
◆上記のような状態が起こっていることは、あまり知られていないのではないでしょうか?
今回は、大阪府などでは、被災者を受け入れる住居を用意しました。今はほっとした気持ちの方が強いのですが、もう少し時間が経過した時に、慣れない土地での生活や、被災の時の恐怖感などメンタルケアの必要な時期がきます。
前向きに考えられる人でも、今回の震災は異常です。決して自信過剰になることなく、自分の心の変化、体調の変化はサインなので、見落とさずに、変化を感じたらメンタルケアを受けて欲しいです。
今後メンタルケアの必要性を求める時期が必ず来ます。その時に対応できるように政府にも準備してほしいと心から思います。